Web マガジン「まごのて通信」第 6 号
中途半端は逆効果
2009.8.20 (木)
「段階的に導入」という甘い言葉の落とし穴
会社のすべての業務をシステム化するにあたって、「システム化度」を 0% から一気に 100% へ持っていくわけにはいきません。自社独自のシステムをゼロから作る場合、あれもこれもと欲張っていてはいつまでたってもシステムは完成しないでしょう。また、パッケージソフトを導入しても、自社の特定の業務に対応する機能がないこともあります。
そこで、システムの導入は段階を踏んで行われることが多く、まごのてシステムでも「最初は必要最小限の機能から」をおすすめしています。最初の「第一段階」に当たる開発期間を「フェーズ 1」とし、フェーズ 1 で導入されたバージョンを「バージョン 1」、次の段階を「フェーズ 2」……のように育ててゆくわけです。
しかし、何でも段階的に導入すればいいというものではありません。やり方を間違えると、かえって手間が増え、何のためにシステム化したのか分からなくなってしまいます。
パッケージソフトを導入したものの、機能不足で月末は地獄
前回ご紹介した砕石運送の S 社は、MS-DOS 用の砕石運送業パッケージソフトを導入して日々の業務を回していました。前回の記事では、システムを動かすハードウェアが古すぎることの危険を中心に書きましたが、S 社はこのソフトウェアの機能の面でも大きな問題を抱えていました。
データを入力し、請求書を印刷するところまでは S 社の業務フローに一致しているので問題ありません。しかし S 社の業務は、「今日はどの車両がどこからどこへ動くのか」という「配車表」を作り、それをすべてのベースにして動いていたのです。このパッケージソフトでは配車表を作成する機能はもとより、車両の動きを検索・集計して表示する機能はなく、S 社の根幹業務である毎日の配車表作成はすべて手作業で行われていました。もっとも頻繁に使われる機能が実装されていないシステム化、ちょっと想像してみてください。
さらに、もうひとつの柱である集金業務についても似たような問題がありました。得意先によって締日が異なり、入金方法も銀行振込、集金に伺って現金払い、お客さまから S 社に支払いに来社とパターンがあります。そこで、締日ごとの集金計画表や入金予定表などが必要なのですが、それらを出力する機能はこのパッケージソフトにはない上に、このシステムに入力したデータを何らかの形で取り出す(エクスポートする)こともできません。MS-DOS の時代には、システムのデータを表計算などの他のソフトウェアで二次利用するという考えは一般的ではなかったので、仕方のない面もあります。
そこで S 社は、
- データをすべて印刷し、
- 印刷された帳票を見ながら、数字を Excel に手作業で入力して集金計画表や入金予定表などの書類を作り、
- 入金された結果が正しいかどうかを定規と蛍光ペンでチェックする
という昔ながらの作業を延々と行っていました。もちろん計算は電卓で。五十日(ごとおび)は言うに及ばず、月末は狭い机の上に書類が山と積まれ、阿鼻叫喚の様相を呈していたようです。
せっかくシステム化に投資しても、これでは本末転倒だとは思いませんか? システムを導入するに当たっては、最も効率化させたい業務は何かを見極め、その機能を軸にシステムを育ててゆくのが鉄則です。決して安くはない IT システム、マズい判断をすると無駄な出費をするだけではなく業務の効率低下すら招きかねません。
社員のモチベーションを上げるシステム、下げるシステム
一度システムに入力した数値を別の形で Excel に入力し直すという二度手間は問題ですが、ではなぜこれが問題なのでしょうか。ちょっと考えてみてください。
真っ先に思いつくのは「時間がかかること」ですね。一度で済むものを二度やるのですから。それから、「手作業が増えれば増えるほど、ミスが発生しやすくなる」という点も問題です。
しかし、私に言わせれば、それらは瑣末な問題でしかありません。この状況で憂慮すべきは、「本来ならしなくていいことを延々とさせられて、社員のモチベーションが下がること」でしょう。考えてもみてください。システムにデータを入力すれば、あとは集計から帳票出力、未収金一覧などをクリックひとつで出力してくれると誰もが当然のように期待するはずです。システムに入力した数字を電卓で検算したり、データの正当性を目視でチェックしたりするのは、本来であれば不要で無意味な作業です。不要で無意味な作業のおかげで、月末を迎えるたびに従業員は膨大な業務量に忙殺され、社内の雰囲気がギスギスしてくる──こんな状況、貴社ではありませんか。
これと似た状況は、多くの会社で見られます。とあるシステム開発会社では、勤務表は Excel シートに入力して提出することになっていました。勤務時間を入力すると Excel マクロが即座に数字を集計し、経理部はその数字で給料を計算します。ここまではいいのですが、業務別の人件費を計算するための Excel シートが別に存在し、そちらにもプロジェクト単位での勤務時間を入力しないといけません。ちょっと考えれば、後者のシートに入力した数字で経理用のデータも計算できるはずなのに、毎月毎月同じデータを 2 枚の Excel シートに入力してメールで提出しなくてはならないのです。社員は毎月末になると、ぶつぶつ文句を言いながらデータの入力をしているとか。繰り返しますが、この話はシステム開発会社で起きていることです。まさに紺屋の白袴、医者の不養生と言えます。
人は、意味のないことや状況の改善しないことを強制されると、モチベーションが下がります。まごのてシステムは、システムにできることはシステムに任せ、人にしかできない、意義のある仕事を社員の手に取り戻すためのお手伝いをしたいと考えています。無意味な作業に貴重なマンパワーを奪われているとお感じの方は、ぜひご相談ください。