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Web マガジン「まごのて通信」第 5 号
そのシステム、あと何年動きますか?

2009.7.14 (火)

あの時君は高かった

今やパソコンが一人に一台以上あるのが当たり前になり、ネットブックが数万円で買え、給料計算ソフトが 10 万円でお釣りが来る時代です。でもこれはここ 5 年、10 年くらいのお話です。パソコンがようやく個人のオフィスに入るようになったのは 20 年ほど前のことですが、当時はパソコンをフルセット(本体、モニタ、15 インチのドットプリンタ)で揃えると 100 万円近くかかりました。ハードウェアだけでなくソフトウェアも安い買い物ではなく、ましてや専門性の強いソフトウェアは 1 本数十万円以上するものも珍しくありませんでした。

そんな時代に OA 化(これも死語ですね)を果たした中小企業の IT 担当者の中には、当時かかった費用を知るだけに、なかなか当時のシステムを刷新する気にはならない人もいるようです。

パソコンが一般家庭や小規模オフィスにまで普及したきっかけを作ったのが、1995 年 11 月(日本語版)に発売された「Windows 95」でした。しかし進取の気性に富む経営者は、それ以前の「Windows 3.1」や「MS-DOS (エムエスドス)」の時代からパソコンを活用し、業務の効率化に取り組んでいます。

今回は、そんな時代に導入されたシステムを長く使い込んできた、栃木県の S 社の事例をご紹介します。

今でも現役の「生きた化石」システム

S 社は運送業を営む、社員数数名の小さな会社です。運送業と言っても小口の顧客に荷物を配達するものではなく、土木工事現場から出る石や砂などを運ぶ、いわゆる「砕石運送」です。

S 社は、砕石運送業種用のパッケージソフトを導入し、業務の IT 化を図っています。ところがこのシステム、何と MS-DOS で稼動する、20 年ほど前の由緒ある(?)ものでした。

MS-DOS をご存じない方もいらっしゃると思います。下の図をご覧ください。

メニュー画面

一覧画面

編集画面

思わず「懐かしい!」と声を出してしまった方もいらっしゃると思います。MS-DOS は基本的にはキーボードで操作する OS で、画面も文字中心の質素なものが多かったものでした。もっともこれは MS-DOS のせいではなく、当時のパソコンの性能によるものです。

システム開発を生業(なりわい)としている私ですが、何でもかんでも闇雲に新しくすればよいとは思いません。「このシステムは 5 年使ったから、そろそろ作り替えるか」などという考えはおかしい。しかし、あまりにも古過ぎるシステムには以下のような危険性があります。

まず、ハードウェアが故障しても、代わりの機械を調達できない可能性があります。このパソコンは PC-9801 という、現在広く使われている Windows パソコンとは別の規格のものでした。今や PC-9801 は希少品で、新品の Windows パソコンよりも中古の PC-9801 のほうがよっぽど高いのです。また、この時代のパソコンに接続できるハードディスクは今では手に入りにくいので、内蔵ハードディスクが壊れたら一大事です。特殊業務で PC-9801 を使わざるをえない企業では、本体やハードディスクが壊れたときに備えて予備の PC-9801 を数台確保している所もあるくらいなんです。

プリンタについても同じことが言えます。ここ 5 年くらいに発売されたプリンタは、MS-DOS パソコンに接続できません。各種帳票が出力できなくなったら、会社の業務はどうなるでしょうか。

データの運用についても不安があります。S 社では年に 1 回、このパッケージソフトの導入作業をしてくれた業者に来てもらってデータのバックアップを取ってもらっているそうですが、十数年も使い続けている昔のハードディスクですから、いつ壊れても不思議ではありません。毎日バックアップを取ってもよいくらいです(ハードディスクの新旧にかかわらず、本来バックアップは毎日取るものです)。また、バックアップされた過去のデータは単なるバックアップに過ぎず、そのデータを分析してどうこう、ということは S 社においてはできませんでした。

とにかく、平成の世にこのシステムが稼動しているのが奇跡だと言ってよいくらいの状態でした。

形あるもの、いつかは壊れる

病気になって初めて健康のありがたみを実感するように、パソコンが問題なく稼動しているときにはそれが当たり前だと思いがちです。しかし、パソコンは安くなったとはいえ、精密機器。ハードディスクは消耗品です。金融機関では、ハードディスクに何の問題もなくても、年に 1 回はハードディスクを総取り換えするそうです。

第 3 回「企業を脅かす『Excel レガシー問題』」では、システムを拡張しようとしたときに担当者がいなくなっていて終了、という恐怖についてお話ししました。それでも、Excel レガシーについては対策を取るための時間を作ることができます。ところが今回の事例では、万が一パソコンが壊れたらその日から業務がストップしてしまい、極端なことを言えば会社の存続にかかわります。だって、請求書が発行できなくなるのですから。S 社のように小さな会社では死活問題になりかねません。

貴社でお使いのシステムは、ハードウェアが壊れたときやデータが消えたときに取るべき手順が明文化されていますか? システムを導入した会社とはすぐに連絡がつきますか? ホテルにチェックインしたらまず避難経路を確認するのと同様、システムの非常事態に取るべき手順を確認しておきましょう。

もし、システムが古過ぎる、代替ハードウェアが入手困難、システム開発会社と連絡が取れないといった現状が確認されたら、システムをリプレースする潮時かもしれません。そのような古いシステムは、得てして会社の現状に即していないものです。今はハードウェア、ソフトウェアともに安くなりました。かつてのパッケージソフトより、今オーダーメイドでシステムを作ってもらうほうが安くつく場合もあります。

ハードウェアが古くても、仮想化という技術を使えば、最新 OS 上で古い OS を動かすこともできます。ぜひ一度、ご相談ください。

ところで、この S 社のシステム、仕様書などはどこにもなく、データがどこにどのような形式で登録されているのか、誰も知りませんでした。システムのリプレースに際しては現行システムのデータをすべて引き継ぐことにしたのですが、この作業は難航を極めました。詳しくは、次回に改めてお話ししようと思います。

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