Web マガジン「まごのて通信」第 4 号
時間と空間を生み出す IT システム
2009.6.11 (木)
IT が変える仕事の本質
IT システムを導入する目的はいろいろありますが、システム化による最大のメリットは何でしょうか。私の個人的な意見を述べると、それはスピード化や計算の正確さではなく、検索性です。
コンピューターの性能が飛躍的に向上し、大量のデータの中から希望のものを瞬時に探し出すことができるようになりました。一度コンピューターの検索機能を体験すると、狭い机の上に帳簿を何冊も広げては情報を目視で探していた時代にはもう戻れません。
ところで、検索とは何もコンピューターの中で完結する話だけではありません。実体のある「モノ」を検索するシステムもあります。例えば、図書館の蔵書検索システムが検索するものは、コンピューターの「外」にある蔵書ですね。
この考え方をもう一歩押し進めると、コンピュータの「外」にあるものをコンピューターの「中」に取り込んで検索するシステムができあがります。
大量の図面をシステムで管理
埼玉県にある I 社は、ファクスで部品作成の依頼を受ける町工場です。
注文の多くは馴染みの部品で、図面を見れば「ああ、あれか」とピンとくるものだそうですが、めったに来ないタイプの部品の注文が入ったときは、過去に作った部品の図面を引き出しから取り出して参考にしなくてはなりません。
I 社では、過去に受注した部品の図面はすべてキャビネットに保管しており、必要に応じてそれらの図面を探すのですが、相手はペラの紙ですから、一枚一枚めくらないと見えないわけで、探すのが一苦労ということでした。
幸いなことに、I 社で使っている複合機にはネットワークスキャナ機能がついていました。「ネットワークスキャナ機能」とは、複合機で書類をスキャンすると、パソコンの特定のフォルダに画像ファイルが作成されるというものです。図面のスキャンは、コピーを取るのと同じ要領でボタンひとつ押すだけの簡単操作です。この機能を使って、すべての図面をパソコンに取り込んでデータベース化し、これらの図面ファイルを検索するシステムを作成することになりました。
スキャンした画像を登録する際、以下の情報を入力します。
- 見積日 (ファクスが届いた日)
- 発注元会社名
- 部品の種類
- 重要度
発注元会社名は、発注元マスタ管理画面で登録した中から選びます。部品の種類についても同様です。重要度は高低のいずれかを選びます。
こうして登録された図面は、下の検索画面から検索することができるようになります。
「去年の 8 月に A 社から受注したあの図面」「今年受注した歯車で、重要度が高いもの」のように、柔軟に条件を指定して検索し、検索結果一覧(画面右上)に表示された項目をクリックすれば画面下にその図面が表示されます。
この図面データベースシステム、この連載の第 1 回でご紹介した部品納品管理システムと同様に単機能の小さなシステムですが、これを導入することで大きなメリットをふたつ得ることができました。
まずひとつは、必要な図面を記憶と勘で探し回るという不毛な作業が不要になったことです。つまらない非生産的な作業を排して本来の作業に集中できるようにするのは、まごのてシステムが目指している理想でもあります。
もうひとつは、このシステムを導入して図面をすべてデジタル化することで、巨大なキャビネットがまるまる不要になったことです。スキャンが終わったら、図面は倉庫にしまっておくなり、焼却処分するなりできます。事務所からキャビネットが不要になり、ゆとりある空間が生まれます。
おまけに、単純な機能しか持たないシステムなので、導入費用も新入社員の人件費 1 ヶ月分もかかりません。活用すれば、すぐにモトは取れてしまうでしょう。
なお、このシステムを使うのは、あまりコンピューターに詳しくない高齢の社長ひとりということでしたので、画面の文字を少し大きめに設定し、ボタン類にアクセラレータキー(*)はつけませんでした。
書類のデジタル化で書庫が空っぽになった話
私は以前にも似たようなシステムを手がけたことがあります。某県 X 市は人口十数万人を擁する中規模の地方都市です。この市の市役所で、固定資産を管理する台帳を電子化するプロジェクトが始動しました。天井まで届く高さの本棚が百以上もある書庫に、土地や建物の登記簿がぎっしりと詰まっています。年度末になれば、担当者の机に所狭しとそれらの台帳が広げられ、さながら戦場です。
このプロジェクトでは、これらの膨大な登記簿をデジタル化し、権利の移動などの手続きをコンピューター上で行えるようにするというものでした。プロジェクト開始から 1 年近い期間をかけて完成したシステムは無事納品され、しばらくしてから市役所を訪ねると、登記簿台帳が詰め込まれていた書庫はもぬけの殻になっていました。もちろん、各種手続きが机の上だけで完結するようになり、飛躍的な効率化が達成されたのは言うまでもありません。
土地代の高い日本のオフィスでは、スペースの有効活用のためにシステムを導入するという考えはもっと浸透してもよいと思います。効率化という「おまけ」までついてくるのですから、検討の余地は大いにあるでしょう。